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その154(りらく2024年1月号)

 12月、川崎の釜房湖でワカサギ釣りをしました。現在、国道286号が通る釜房大橋や釜房ダムのダムサイトからの釣りは禁止されていますが、手漕ぎのボートやカヤックであれば、湖上からの釣りは可能になっています。当日は12月にしては気温も高めで、のんびりと周りの景色を楽しみながら、ワカサギ釣りを楽しむことができました。
フィッシングカヤック ワカサギ2匹釣れました~
釜房湖と釜房山 本日の釣果


 話は変わって、生前贈与の事例に関する前回からの続きです。数年前に亡くなった、ある資産家の方の相続税の税務調査の際に、被相続人から相続人へ生前贈与した財産があったことが判明し、その生前贈与の時期をめぐって納税者と税務当局との間で争われた裁判事例をご紹介しています。
被相続人の甲は、元中小企業の創業社長で、生前、数度にわたり相続人である子や孫に金地金(ルビ=じがね)を贈与していました。平成6年11月に、甲は娘の乙に金地金13キログラムを贈与しました。乙の主張によると、乙の夫が甲の会社の後継者として社長に就任したお祝いとして、「大事に持っているように」と言われ、その金地金を乙の自宅に持ち帰ったというものです。その後も平成12年7月に甲から「乙の子供(甲の孫)の将来の役に立ててくれ」と言われ、金地金5キログラムを手渡され自宅に持ち帰っています。さらに、平成16年12月にも金地金7キログラムの贈与を受けています。その後、乙はこの3度にわたって贈与を受けた金地金計25キログラムを平成18年4月に売却して換金しました。
以上のような経緯に対して、税務署側は、金地金を売却して換金した平成18年4月が、実質的に甲から贈与を受けた日であるから贈与税の時効は成立していないとして、平成25年3月15日付で、乙に対し平成18年分贈与税の決定処分(税務署の権限で行う課税処分)を行いました。平成18年中の贈与だとしますと、その時効成立の日は、贈与税の申告期限である翌年の平成19年3月15日から起算して6年を経過する日ですので、平成25年3月16日となります。その時効直前に税務署は乙に対する贈与税の課税処分を行ったわけです。
確かに、裁判の記録によりますと贈与者の甲は、一旦は乙に金地金を手渡したものの、その後になって返却を求めたり、甲が乙に金地金を引き渡したりする際に「贈与税の申告をしなくてよい」などと指示していた等の証言があり、税務署側は実際に乙が金地金を換金するまでは、贈与が確定していなかったと判断したわけです。
これに対する裁判所の判断ですが、3回にわたる贈与の内、先の2回については、1回目は甲が贈与した動機が乙の夫の社長就任祝いだったこと、2回目に関しては孫の将来のためにといった甲が贈与を行った動機が明確であること、そして、その後乙の自宅にこれらの金の地金を保管していた等の事実から、乙の主張を認め、3回目の贈与に関しては甲の動機が不明であるとして、税務署の処分を認める判決を下しました。
上記のいずれの贈与も当事者間で贈与契約書が交わされていなかったため、贈与の日がいつであったのかの明確な証拠がなく、当事者の記憶や証言を基に税務署側と納税者側が裁判で争い、贈与者の動機が明確であった贈与に関して原告である納税者側の主張を認めたものです。

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