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その97(りらく2019年4月号)
裏山の頂上

 そろそろ桜の季節となりましたが、この時期は山の天候も安定してスキーツアーにも絶好のシーズンです。3月の初め、福島県の土湯峠近くにある野地温泉を起点とする裏山スキーハイキングに行ってきました。温泉の裏山でスキーを楽しみ、降りてくれば、そのまま温泉に直行という訳です。

スノーハイク今年は暖冬で雪は少なかったのですが、野地温泉の辺りは標高1200メートル近くあり、例年と比較すれば少ないものの、スキーで滑るにはまだ十分な積雪です。7名のパーティで、温泉のある建物の脇から裏山をハイクアップし、適当な斜面を何本か滑って、最後はまた温泉のあるスタート地点に戻るという計画です。
 一帯はブナの森で、木と木の間が比較的空いていて滑り易い斜面が続いています。風もなく穏やかな森の中を仲間とおしゃべりなどしながら登っていくと、やがて斜面の頂上に出ました。頂上からは360度の視界が広がっていて、遠く西大巓(ルビ=にしだいてん)等、吾妻連峰の山並みを一望することができました。

ブナの大木と野ネズミ君 足裏に隠れた野ネズミ君

 頂上付近の雪質はまずまずで、何本か登り返して滑りを楽しんだ後、そろそろ野地温泉に戻るべく、森の中を少し横へ移動していたところ、大きなブナの木の根元から何やら小さな生き物が出てきました。立ち止まって眺めていると、巣穴があると思われる木の根元と外を何度か行き来しながら、なんと私の足元までちょろちょろとやって来たではありませんか。しまいには私のスキーブーツと板の間に潜り込んでしまいました。はじめはヤマネかと思いましたが、しっぽに毛が生えていないので野ネズミ君のようです。全く臆することなく私の足裏に収まってくれた野ネズミ君の勇気と好奇心に脱帽です。野兎やテン等の小動物も、春になると動きが活発になって見かける機会も増えてくるのですが、こんなに近くで森の住人にお会いできたのは幸運でした。


 さて、今年は改正された民法のお話をしておりますが、今回はその民法に新設された「配偶者居住権」についてお話ししてみたいと思います。「配偶者居住権」とは、例えば夫が亡くなった場合、その夫(被相続人)が所有していた建物(自宅)に居住している妻が、引き続きその建物に居住することができる権利です。「夫名義の家にその妻である自分が引き続き住むのは当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、法律上は、夫の死亡によりご自宅を含め夫名義の財産は全て、相続人全員の共有に属することになります。遺言書があれば、その遺言書に記載された相続人が相続することになり、遺言書がない場合は、その自宅を誰が相続するか相続人間の遺産分割協議により決定する必要があります。配偶者居住権は、配偶者以外の者がご自宅を相続等により取得した場合でも、優先的にその配偶者が引き続きご自宅に居住することを保証する権利です。
高齢化社会の進展により、相続開始時点ですでに高齢となっている配偶者の生活の場を長期にわたって保護する必要性が高まっており、この配偶者居住権の創設により、生存配偶者は、遺産分割がどのように行われようとも住み慣れた自宅に引き続き居住できることになります。

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