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その79(りらく2017年10月号)
心字雪渓

 9月の初旬、丁度この時期になりますと鳥海山の南斜面に現れる、ある文字を見たくて今年も出かけました。
 それは、鳥海山の数ある登山口のうち、南側から登る「湯の台」コースの中腹の、河原宿という場所から見ることができます。河原宿には、八丁坂という急な斜面を登り切った先に、今は使われていない山小屋があり、丁度良い休憩ポイントになっています。

湧き上がる雲と雪渓 その山小屋の軒下に腰を下ろして山頂の方角を見遣ると、今年も見えました。「心」の文字が。河原宿からこの時期に斜面に点在する複数の雪渓を眺めると、それらが合わさり、正に「心」の字の如くに見えるのです。7月中旬くらいまでは、雪渓はまだつながっていて、頂上直下からこの河原宿までスキーで一気に滑り降りることができるのですが、その後梅雨や夏の暑さで雪解けが進み、9月になるとご覧の写真のような状態になるのです。実際に登って行きますと、それぞれ結構大きな雪渓なのですが、眺める角度と手前の尾根が雪渓の一部に被さることによって「心」の字に見えるのです。

チョウカイアザミの花 今年の夏は天候不順で、山行の方も晴天に恵まれることがあまりなかったのですが、今回は、秋の碧い空が天高く広がり、心字雪渓もくっきりと確認することができました。スキー板を背負ってきたので、眺めるだけではなく、左手の「点」の雪渓まで登って滑りも楽しむことにしました。
 この時期になりますと雪渓の表面は、スプーンカットといって、丁度表面をスプーンでえぐったような無数のでこぼこが波のように連なり、おまけに雪質もザラメが硬く締まった状態になります。「心」の字から想像される優しいイメージとは逆で、スキーの操作の方は決して易しくはないのですが、そこは「心・技・体」一体となって滑れという事でしょうか。
 今年も心字雪渓を目で楽しみ、そして、その雪渓で秋スキーも楽しむことができ、大変満足な一日でした。


 昨年の11月号から高齢者の財産管理についてお話しして参りましたが、今月号からは、財産の「承継」、つまりご自分が保有している財産をどう次の世代につなげていくかというテーマについてお話しして参りたいと思います。
 私は現在63歳です。ささやかではありますが残った財産を将来どうしていくべきか、折に触れ考えることが多くなってきました。先ずは、老後の生活の拠点や生活費の確保が最優先ですが、この年齢になりますと、ある程度将来の事が見えて参りますので、残った財産をどう次の世代に承継していくべきか、自然と考えるようになったのだと思います。
 これまでお話ししてきた、ご自分でできる簡単な財産のリストアップやその管理の方法が先ずは大切なのですが、そのあたりの事は、是非昨年の「りらく11月号」以降のバックナンバーをご覧いただければと思います。
 さて、この財産の「承継」には、相続、贈与、売買の3つの方法があります。それ以外に、まだあまり一般的ではありませんが、信託という方法もあります。財産の「承継」を考える場合、以上4つの方法から、ご自分にとっても、その財産を受け継ぐ方にとっても、最も幸せになれる方法を選んで行うことが大切です。
 また財産とひと口に言っても、預貯金、有価証券、不動産の他に絵画や宝石等の動産類まで、種類は様々です。墓所や仏壇も承継してもらう必要があります。これらの財産の種類や金額も考慮して、前記4つの中から財産の承継の方法を選んで実行していくことになります。
 次回から、これら相続、贈与、売買、信託という4つの承継の方法について少し詳しくお話をして参りましょう。

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