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その78(りらく2017年9月号)
登山口から北岳が見える

 7月の下旬、南アルプスの北岳に登ってきました。北岳は標高3193メートルで、日本では富士山(標高3776メートル)の次に高い山ですが、山に関心のない方はあまりご存じないかもしれませんね。
 土曜日の夜中に、一緒に登る仲間と二人で運転を交代しながら甲府まで高速道路をひた走りました。甲府から登山口のある広河原までは、マイカー規制もあって乗り合いバスで向かうのですが、折からの登山ブームもあり、大変な混みようで、初っ端から東北の山とは違うなと思わされました。登山口に降り立つと遥か彼方に目指す北岳の頂上が見え、期待と不安が交錯する登山前の、あの独特な緊張感に包まれます。しかも1泊2日の山行で、初めて登る山ですのでなおさらです。

頂上にて 幸いなことに今回は食事付きの山小屋泊まりですので、荷物も少なめで、あとは体調とお天気次第です。初日は標高1500メートルの登山口から山小屋のある白根御池というところまで標高差700メートルをひたすら登っていきます。東北の山で標高1500メートルを超えますと森林限界といって、大きな樹木が生えている森林は無くなってしまうのですが、南アルプスでは、山小屋のある標高2300メートル付近でも鬱蒼とした森の中の登山道で、日影が多く夏場は助かります。

頂上付近の山野草 幸運にも2日目も晴れて、いよいよ山頂を目指します。山頂手前の尾根筋に上がるまでは、ひたすらつづら折れの登山道を登っていきます。途中、足元に咲いている可憐な高山植物の花々が励ましてくれます。ようやく尾根に上がると、山頂まではあと一息です。前方に富士山が雲の上から頭を出しているのが見えました。さすが日本一の山です。つい手を合わせて拝んでしまいました。

 尾根から先は森林限界を超えて周りを遮るものはありません。そして、しばらく尾根沿いの道をたどって頂上に登り詰めると、360度の大パノラマが待っていました。仙丈ケ岳、甲斐駒ヶ岳等の南アルプスの山々の他、遠く富士山や八ヶ岳も見ることができ、3千メートル級の頂からの絶景を満喫しました。

 さて、高齢者の財産管理についてのお話です。前回に引き続き、任意後見制度についてお話しします。前回の復習になりますが、任意後見制度は、将来ご自分の判断能力が低下した場合に備えて、予め自分自身で成年後見人を選んでおける制度で、ご自分の意志で、亡くなるまでの間、医療、介護などの身上監護の他、財産の管理も任意後見人に託することができます。お元気なうちに任意後見人を選んでおけば、将来の生活に対する様々な不安を軽減することができます。
 任意後見人を依頼するには、先ず、任意後見人を依頼する方を選定して任意後見契約を交わしておきます。その上で任意後見を必要とする時期が来たら、家庭裁判所に任意後見の申し立てを行って任意後見の開始と任意後見監督人の決定を受けることになります。そして、任意後見が開始されると、任意後見人の業務を任意後見監督人と家庭裁判所が監督していくことになります。

 つまり、この制度は単に任意後見人に身上監護や財産管理を任せるだけでなく、これを依頼された任意後見人の監督を任意後見監督人(家庭裁判所が被後見人との利害関係のない第三者から選任します)と家庭裁判所が継続して行っていくというものです。任意後見人は、家族や友人、知人など、どなたでもなることができますが、任意後見監督人と家庭裁判所がその仕事振りを監督することにより、被後見人の身上監護や財産管理が適確に行われるので、この制度は、単に家族や友人に老後の事を依頼する場合と比較してより確実性が高いといえます。
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